「初めての場所が苦手です」について

初めての場所では、はじめての空間の把握、
はじめての空間内にある物やひとの把握が必要になると考えられます。

例えば、初めての室内遊戯室に行った場合、
私たちはどのようなことを思い、どう行動しているかを想像してみましょう。

室内に入ってすぐに
「広いね。床にマットが敷いてあるね。走り回れそうね」
「遊具がいっぱいあるね。あれは大きなブランコかな? 乗ったら楽しそう」
などと思いながら室内を移動し、
探索するかと思います。

「広い(空間)」「床にマットが敷いてある」「遊具がいっぱい」
「大きなブランコかな?」が空間や物の把握であり、

「走り回れそうね」「(大きなブランコに)乗ったら楽しそう」は
空間や物にどう関わるかという考えが思いついている内容と考えられます。

把握においては過去の記憶との照合があり、
先ほどの例においては、一般的には大きなブランコはあまりないものの形状から
「大きなブランコかな?」と、初めての物でも想像して捉えていました。

初めての場所が苦手な子どもは、
このような過程でとまどっているのかもしれません。

床にマットが敷いてあるこの空間は何?
どうしたらいいの?
大きな板にロープがついている物はいったい何?
あれはどうする物なのか?と、
「はてな?」がいっぱいなのかもしれません。

ひとは新規なことに興味・関心を持ちますが、
あまりにも「はてな?」が多いと不安になると考えられます。

また、感覚の過敏さがあると、
初めての場所では予測がつきにくく躊躇する場合があります。

例えば、音に対する過敏さがあると、
いつもの場所では大きな音は鳴らないという安心感があり
入室して遊ぶことができるものの、
初めての場所では「大きな音が鳴らないかなぁ」という不安が先に立ち、
慎重になってしまうことも考えられます。

背景的な要因を探りながらの応援になりますが、
いずれにしても不安が大きいとアクティブな行動になりにくくなります。

「初めてだけど、おもしろそう」と思ってもらえるように、
安心感の中でおもしろさや醍醐味をお伝えして、
ちょっとした体験・探索から段階づけながらすすめることで、
ちょうどよいチャレンジにつながるのではないかと考えます。
 
 
 

「初めての場所が苦手です」について

株式会社BASEともかな
テクニカルマネージャー
作業療法士/日本感覚統合学会 認定セラピスト/特別支援教育士
嶋谷 和之(しまたに かずゆき)


[経歴]
1988年 京都大学医療技術短期大学部作業療法学科卒業後、
奈良県心身障害者リハビリテーションセンター 勤務
1996年 大阪市更生療育センター 勤務
2017年 奈良県総合リハビリテーションセンター 勤務
2021年 児童発達支援・放課後等デイサービス FLOW 勤務
現在に至る


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